日本の電気はどうやって普及していった? 電力会社の発展と歴史とは

1.電力の小売全面自由化
2022.09.12

現在、契約する電力会社を自由に選ぶことができることは誰もが知っているほど電力自由化の認知度は上がってきています。それまでの日本は各地域の大手電力会社が独占的な電力供給体制を行っていたのですが、いまでは全国約800社の電力会社が存在しています。では、どうして日本はこのような電力供給体制となっていたのでしょうか?今回は地域の大手電力会社(旧一般電気事業者)の発展の歴史について見ていきましょう。

 

旧一般電気事業者の誕生

日本で初めて電気が点灯してから約10年後、日本に初めて電力会社が誕生しました。そして、その後の日本の電力体制を支える事業として発展を遂げていきます。年表に沿って振り返っていきましょう。

 

◆1878年:日本で初めて電灯が点灯

日本で初めて電灯が灯されたのは、1878年3月25日のことです。この頃はまだ白熱電球や蛍光灯などではなく、電気を使って発生させた火花を利用した「アーク灯」という電気が使われていました。

この日は東京虎ノ門工部大学校で東京電信中央局の開業祝賀会が開催されることとなっており、それに合わせてアーク灯を点灯しようという計画が進められました。この頃はまだ蓄電池を利用していたため長時間灯すことはできませんでしたが、式典に参加した人々は明るい電灯に目を見張ったと伝えられています。

 

◆1884年:日本初の白熱電球が点灯される

世界で初めて白熱電灯が発明されたのは、1879年10月21日のことです。エジソンが白熱電球の実用化に成功し、この10月21日は現在「あかりの日」と制定されています。この頃日本は明治時代で、多くの西洋文化が流れ込んできていました。そのため5年後の1884年には日本にも白熱電球が伝わり、上野・高崎間鉄道開通式で初点灯されました。

 

◆1886年:初の電気事業者「東京電燈」が開業

エジソンが白熱電球の開発に成功してから7年たった頃、日本で初めての電力会社である「東京電燈(東京電力株式会社の前身)」が開業しました。この東京電燈を立ち上げ、後に東芝の創業者となったのが藤岡市助という工学者です。実はこの藤岡市助は、1878年の東京虎ノ門工部大学校のアーク灯点灯計画に学生として参加していました。

そして1887年3月25日に家庭用の配電が始まりました。この3月25日は日本で初めて電灯が点灯した日でもあり、のちに日本電気協会が「電気記念日」として制定しています。その後1900年には53の電力会社が登場することとなり電灯照明は20万灯を数え、1906年には50万灯にも達し、徐々にその数を増やしていきました。

 

◆1912~1927年:電力の普及率が一気に高まる

多くの電力会社が登場し出してから、一気に電力の普及率は高まっていきます。1912年には東京市内全域に電灯がほぼ完全普及しており、その8年後には電力が過剰となってしまったため、電力会社の再編が行われました。その後、1927年には全国の電灯普及率は87%となり、誰もが電気を使うのが当たり前という時代になりました。

 

◆1946年:電力不足が問題となる

終戦後、日本は戦後のエネルギー不足のために全国的に電力不足に陥りました。そのため、同年に「電気需給調整規則」が公布され電気の使用制限かかけられました。もうこの時には電気は生活にはかかせないエネルギーとなっていました。

 

◆1951年:9電力体制(旧一般電気事業者)発足

戦前まで電気事業は国営事業となっており、国がそのすべてを運営していたのですが、終戦後は日本発送電が発電と送電を行うこととなり、全国9つに分けた配電会社が配電を行っていました。この9電力体制で配電を行っていたのが、地域の大手電力会社(旧一般電気事業者)となります。9電力は、北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力です。なお、1972年に沖縄が返還され、琉球電力公社が沖縄電力となり現在の10電力体制となりました。電力自由化が開始されたのが1995年のことなので、44年ものあいだこの体制が継続して行われていたことが分かります。

垂直一貫体制が行われていた理由

9電力体制は、垂直一貫体制を行ってきました。垂直一貫体制とは、発電・送配電・小売までを1つの企業が一貫して行うことです。戦後、電気事業者を再編成する際に公営か民間か、発送配電一体か分割かという議論が多く行われていましたが、電気事業再編審議会会長の松永安左エ門の案の「地域別」「民営」「発電・送配電・小売一貫」の垂直一貫体制が採用されました。

このような仕組みが制定されたのは、合理的かつ安定的に発電や送電を行うためのネットワークを構築できるからという理由です。一貫してその地域の管理を一社が行うことによって、大規模な災害などが起こった時でも迅速に復旧のための活動を行うことができると考えられていました。

しかし、地域ごとに電力事業を独占しているため、価格競争が発生せず世界的にも電気料金が高くなってしまっていることが問題となったことにより、電力自由化が開始されました。

まとめ

いかがでしたか?電力が日本で初めて電灯が点灯したのは1878年のことですが、そこから東京電燈が登場したことにより、一気に日本全域に普及していきました。戦後は9電力体制が敷かれたため、そこから長い間地域ごとの大手の電力会社が電力市場を独占する仕組みになっていました。それを大きく改革したのが電力自由化ということになります。この流れを理解していると、現在の電力自由化のメリットをより理解することができるでしょう。