前編では「水力」「火力」「原子力」など大規模発電の説明をしました。現在、全発電量の約7割は火力が占めていますが、世界が脱炭素へ大きく舵を切ったいまCO2排出量の多い火力発電のシェアは減らさざるを得ません。それに打って変わって開発が進められているのが、太陽光や風力などといった「再生可能エネルギー(略:再エネ)」による発電です。2018年の第5次エネルギー基本計画において「再エネの主力電源化を目指す」と書かれ、再エネ電源の開発に本腰を入れています。2020年には、全発電量の12%を再エネ電源が占めています。
いままで火力発電が担ってきた莫大な供給量をまかなうことと、需給にあわせて発電量を微調整する調整力が課題ですが、脱炭素へ向けてなくてはならない設備です。今回は、今後発展が望まれる再生可能エネルギー(新エネルギー※水力除く)による発電方法についてそれぞれ説明していきます。
再生可能エネルギーとは、電気を作るエネルギーが燃やせばなくなる有限な資源である化石燃料などではなく、太陽光や風力などといった枯渇しない自然界のエネルギーを指します。特徴は、発電時にCO2を排出しないことです。また、輸入大国である日本において国産のエネルギーは安定供給においても期待がされています。
自然のエネルギーを利用するので、燃料のように調達はできません。国や地域によりポテンシャルの高いエネルギーはそれぞれ異なるので、地域特性に合わせた開発が重要となります。日本ではどのような発電バランスが望ましいのでしょうか。
再生可能エネルギーのメリットとして、「発電時にCO2を排出しない」「エネルギーが枯渇しない」は共通項目になるので、それ以外の特徴をあげていきます。
一般家庭にも導入が拡大しているので、身近な発電方法ではないでしょうか。太陽光発電は、シリコン半導体などに光が当たると電気が発生する現象を利用し、太陽の光エネルギーを太陽電池によって電気エネルギーに変換します。電池という名前がついていますが、蓄電はできません。
発電設備は導入にあたり用地が必要ですが、太陽光は既設の建物の屋根などにも設置することができるため急速に拡大しています。2019年の再エネによる発電量(水力除く)のうち65%ほどが太陽光であり、導入のしやすさが顕著に表れています。設備容量においても、2021年度に6,280万kWに達し、全発電設備の約2割を占めます。住宅用の太陽光はとても小さなものですが、導入量の増加により今後のエネルギーミックスのひとつとして重要度は増していくことでしょう。
【メリット】
【デメリット】
風力発電も目にする機会が増えてきたのではないでしょうか。発電方法は見た目や名前そのままで、風のエネルギーで風車をまわし電気エネルギーを発生させています。エネルギー変換効率は再エネのなかで一番高く、ブレード(羽根)の角度を調整することにより風速が2倍になれば発電量はなんと8倍にもなります。風車の直径を2倍にすることでも発電量は4倍になり、大型の風力発電の開発が進められています。
そして近年注目されているのは洋上風力です。実は風力発電は海の上にも設置することができ、四方を海に囲まれている島国の日本は非常に有力な発電方法として大手企業が続々と開発に乗り出しています。2019年の再エネによる発電量(水力除く)のうち約7%でとどまっていますが、世界洋上風力サミット(2021年)において「日本の洋上風力発電の導入可能量は、日本の全需要電力量の8倍」とも言われており、現実的にはさまざまな制約があるにしろ非常に高いポテンシャルを持っていることに間違いはありません。
【メリット】
【デメリット】
基本的な構造は火力発電や原子力発電とおなじく、発電機につながったタービンを蒸気でまわし発電をします。その蒸気の熱源が地熱によるものであり、蒸気の利用方法により2種類の方式があります。地下の高温の蒸気を直接タービンに送る「フラッシュ方式」と、沸点の低い媒体を地熱の蒸気で加熱し、それで発生した蒸気をタービンに送る「バイナリー方式」です。バイナリー方式は、地熱の温度が低く十分な蒸気が得られないときや、既存の温泉施設などへ送られる温泉熱を利用する場合などで活用されます。
日本は活火山が多く、世界3大地熱資源大国と呼ばれているほど地熱資源に非常に恵まれています。しかし、高額の初期費用がかかることや適地が温泉の観光地に近いことなどが開発の足枷となっています。全発電方法で一番設備容量が少なく、2019年の再エネによる発電量(水力除く)のうちでも3%にも届いていません。太陽光や風力と違い24時間安定した発電が可能でありベースロード電源として期待がされていますが、開発へのハードルが高く伸び悩んでいるのが現状です。
【メリット】
【デメリット】
バイオマスとは、木くずや生ゴミ、家畜の糞尿など動植物由来の資源の総称です。燃料を燃やすかガスを発生させてタービンを回します。基本的な仕組みは火力・原子力発電と似ています。燃料を燃やすので発電時にはCO2を排出しますが、燃料の木は伐採されるまでの期間に光合成によりCO2を吸収していたのでトータルで見るとCO2発生量は増えていない(=カーボンニュートラル)という考えから、脱炭素の発電方法とされています。
また、ほかの再エネよりも開発地を選ばないのも特徴です。燃料を輸送することが可能なので、開発地により発電量が変わることがありません。ただ、輸送距離が長いとその分輸送時にCO2を排出してしまうため、環境に優れているかどうか分からなくなります。ですので、ゴミ処理場のすぐ隣に建設するなど一定の効率化は必要です。
発電方法については、燃料により3つの方式があります。
「直接燃焼方式」
木くずなどの木質燃料、可燃ゴミ、精製した廃油などを燃料とし、それらを燃やした水蒸気によりタービンを回す方式。
「熱分解ガス化方式」
木質燃料や可燃ゴミが燃料ではありますが、加熱により発生するガスによってタービンを回す方式。
「生物化学的ガス化方式」
家畜の糞尿などを燃やさずに発酵させることによりバイオガスを発生させ、そのガスでタービンを回す方式。
【メリット】
【デメリット】
水力発電は、「発電の種類【前編】」でも登場していますが、ここではさらに中小規模の水力について深堀します。中小の規模に明確な定義はありませんが、発電出力が10万kW以下を「中水力」、1万kW以下を「小水力」と呼ぶことが多く、さらに新エネ法においては1,000kW以下の水力発電を新エネルギーと定められています。
大規模な水力はほぼ開発が終わっており、小規模な適地しか残っていないのが現状です。しかし、水力はエネルギー変換効率が優れており、またCO2排出量もかなり小さいためクリーンな再エネとして今後は中小規模の発電所が発展していくものと思われます。
【メリット】
【デメリット】
まとめ
地球環境を考えると、これらの再エネ発電の重要度は増していく一方です。これら以外にも、海洋エネルギーなどさまざまな再エネ発電の開発も進められています。そして現在主流の化石燃料は日本は輸入に頼らざるを得ない状況ですが、これら再エネは非常に恵まれておりとても高いポテンシャルを持っています。脱炭素・安定供給・低コスト化へ再エネがさらに発展していくことに期待がされます。