電力自由化に伴う新電力の役割とは? 10電力体制の終焉と今後の課題

1.電力の小売全面自由化
2022.09.27

2016年に電力の全面自由化を機に多くの新電力会社が登場し、戦後制定された10電力体制が終わりを迎えました。長期に渡って日本の電力を支えてきた10電力体制ですが、やはり価格競争のことを考えると競合会社の必要性が高まり、1990年代から順次電力自由化が行われてきました。

では、電力自由化にともなった新電力の役割と今後の課題はどのような点があるのでしょうか?

 

10電力体制とは

10電力体制とは、1951年に行われた電気事業再編成により、制定された10つの電力会社(制定時は9つ)のことを指します。地域ごとに大手電力会社(旧一般電気事業者)が設立され、発送配電と小売をすべて一貫して行ってきました。この体制は、戦後の日本で国営だった電気事業を民営化する際により合理的に電力を供給するために行われていたのですが、価格競争は起こらず世界的にも高い電気料金となってしまっていることから、電力自由化が開始されました。

 

10電力体制の終焉を迎える

電力自由化とは、電気の小売業への参入が全面的に自由になったことを指しており、家庭や事業者などのすべての需要家がたくさんの選択肢の中から自由に電気を購入することができるようになったことを言います。このことにより、これまでは電力事業を行うことができなかった企業が多く参入してきており、これまで日本の電力業界を支えてきた10電力体制が終わりを迎え、新しい体制へ進むこととなりました。

新電力の仕組み

電力自由化に伴い、多くの小売業者が参入してきました。電力事業は「発電」「送配電」「小売」の3部門に分かれていますが、このうちの「小売」の部門に参入できるようになったのが電力自由化です。そしてここに参入してきた企業のことを「新電力会社」とよびます。新電力会社は電力市場から電気を購入したり、自社で発電している企業や発電会社と直接取引(相対取引)などで仕入れて販売しています。

ただ、送電部門に関しては基本的に地域の大手電力会社が所有している既設の送配電線を利用しています。このような仕組みで、電力自由化が成り立っているのです。

 

新電力の役割

では、新電力が参入してきたことによって、電気事業者はどのように変わったのでしょうか?ここからは新電力の役割について見ていきましょう。

◆電気料金が安くなる

電力自由化によって10電力体制が終わり、多くの新電力が参入しました。これにより顧客である需要家は自分で好きな電力会社を選択することができるようになっています。そのことにより価格競争が行われるようになったため、電気料金が安くなるという効果が生まれています。電力自由化の目的には電気料金の低額化もあるので、価格競争が発生することが新電力のいちばんの役割だと言えます。

 

◆地域の活性化

新電力が参入したことによって、大都市以外の地方にも電力会社が置かれるようになりました。これまでの10電力体制の場合、電力会社の本店は大都市に設立されているので、全国の電気の売上に対する法人税などの税金はすべて大都市にしか流れないという状況でした。しかし、新電力が地方に設立されることによって地域でお金の循環が生まれるため、地方の活性化につながると言われています。地域の新電力会社は、この循環を地産地消と掲げ営業をしている会社が多く見受けられます。

 

◆雇用が増加する

新電力が参入することによって、企業の事業拡大が促進されその分雇用も生まれます。そのうえ、先ほどの内容のように新電力会社は地方でも多く設立されており、地方で安定した雇用を生むことができます。地方の雇用が増えることによって、その土地に残る若者が増えるので、人口減に歯止めをかけることができますし、経済の循環を回すことが可能となります。

 

電力・ガス取引監視委員会の設置

電力自由化に伴い、さまざまな新電力が参入してきました。そのことにより、多くのメリットも発生しましたが、やはりネガティブな要素もあります。さまざまな企業が参入したため、不正な取引をする企業もまぎれる可能性があります。そのため、市場の監視機能などを強化し健全な競争を促すことを目的として、経済産業大臣直属の組織である電力・ガス取引監視委員会が設置されています。このことにより、大手電力会社と思わせるような勧誘や契約書面の不交付、需要家の強制的な縛り付け等といった不適切な行為を監視し指導が行われているので、新電力会社が公正に取引を行うことができ、さらに需要家も安心して電力会社を選べるようになっています。

まとめ

いかがでしたか?電力自由化に伴って長く続いた10電力体制が終わりを迎え、多くの新電力が参入しました。この電力自由化は電気代の競争力を生むだけでなく、地方の活性化も貢献しています。自由化により電力事業は大きく変わってきていますが、電力会社は公正な取引を遂行するように電力・ガス取引監視委員会が設置されており、需要家が安心して電力会社を選択できる環境が整えられています。