生活に欠かせないエネルギーとなった電気は、毎日莫大な量が発電されています。ではその電気はどのように発電されているのでしょうか。ここでは、発電の種類とそれぞれのメリット・デメリットを説明します。
発電の種類は大きく分けるとこれまで日本の発電を支えてきた大規模の「水力」「火力」「原子力」と、これから発展が見込まれている「太陽光」や「風力」などの再生可能エネルギーに分けることができます。この前編では、現在主流の大規模発電について深堀していきます。
水が流れるエネルギーを、水車を利用して電気エネルギーに変換する発電です。イメージしやすい発電方法のひとつではないでしょうか。日本の電気の普及を最初に支えた古くからある発電方法です。水力発電と言えば大きなダムを想像しますが、適した土地はほとんど開発が終わっており近年では中小規模の水力が建設されています。
発電方法としては、自然の河川の流れをそのまま利用した「水路式(流込式)」や、池に貯めた水を必要にあわせて放出して発電する「貯水式」「調整池式」と、電気に余力がある時間に上流の池に水を電力で揚水してくみあげておき電気の需要にあわせて下流へ水を流して発電する「揚水式」などがあります。
【メリット】
【デメリット】
主に化石燃料を燃やして発生した熱エネルギーを、電気エネルギーに変換する発電です。高度経済成長の日本の発電を支え、現在でも日本全体の約70%の発電を担う重要な発電となっています。世界でも一番利用されています。
構造の違いでは、蒸気の膨張力を利用してタービンを回して発電する「汽力発電」と、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「コンバインド・サイクル発電」に分けられます。
燃やす燃料の違いもあります。現在主要な化石燃料は次のとおりです。
化石燃料を輸入に頼らざるを得ない日本において、安価で仕入れられる石炭は主要な燃料として発電のベースとなっています。全発電方法のなかで約3割の発電量を担い、日本の供給力を支える柱であることは間違いありません。しかしCO2排出量が多く、地球温暖化の影響への問題で非難が強まっています。
【メリット】
【デメリット】
日本に火力発電所が建設された当初は石油により発展を遂げ、1973年には全発電量の約7割が石油火力によるものでした。しかし、その後2度のオイルショックの影響により石油のシェアは減り続け2019年には6.8%にまで下がりました。発電コストも高く稼働率も低い為、今後さらに石油火力は廃止が進むことが見込まれます。
【メリット】
【デメリット】
オイルショックの影響を受けた石油に代わりシェアを伸ばしてきたのが天然ガスです。輸送効率を上げるために液体(液化天然ガス:LNG)に変えるため、LNG火力とも呼ばれます。日本の全発電量の約4割が天然ガス火力であり、2011年からの原発停止以降1番のシェアを占めています。出力の調整が比較的容易なため、出力が気候に左右される太陽光や風力のバックアップとしても重要な役割を持っています。
さらに化石燃料のなかではCO2排出量が少なく、また、大型発電の中では「3E+S」が優れています。そのため、天然ガスは今後も発電の柱のひとつとして役割を果たしていくことと思われます。
※「3E+S」とは、エネルギー政策に求められる”安定供給・経済性・環境・安全性”の略称です。
【メリット】
【デメリット】
仕組みは火力発電と同様で、水を加熱して水蒸気を起こし発電機につながったタービンを回して発電をします。火力発電との違いは水を加熱する熱源です。火力発電の化石燃料を燃やすボイラーが原子力発電の原子炉にあたり、この中でウランの原子の核分裂を人工的に起こし熱エネルギーを生み出しています。
ウラン燃料のエネルギーは非常に大きく、1cm角ほどの大きさの燃料で一般家庭の半年分以上の電気を発電することができます。また、発電時にCO2を排出しないため脱炭素にも有力なエネルギーです。しかし、ウラン燃料は放射性物質であるため慎重な管理が必要となります。
またコスト面においては、建設費用(イニシャルコスト)が高いですが燃料費(ランニングコスト)が安価なため、稼働率が高いほどコストパフォーマンスは高まります。ただ、2012年6月に改正原子炉等規制法が成立し、運転期間が原則40年(特別点検が通れば最長20年まで延長可能)と定められ、既存の原子力発電所は順次寿命を迎えていくこととなります。
2010年の原子力の発電量は全体の25%を占めていましたが、2011年の東北震災により次々と稼働が止まり、2014年には原子力が全基停止にまで至りました。そこから再稼働に向けた検査や地域住民への理解を得て2020年には全体の4%まで発電量が増えています。
エネルギー効率・コスト・脱炭素などにおいて非常に優れている原子力発電は今後も活用したい発電ではありますが、福島第一原発事故により世間の疑義が高まっているこの状況下において、さらなる再稼働や廃炉になる原発の代わりとなる新たな原発を推進するには、まだまだ数多くの課題が残されています。
【メリット】
【デメリット】
2020年に、新たな発電設備を更地に建設・運転した際のkWh当たりのコストを、一定の前提で機械的に試算(既存の発電設備を運転するこすとではない)は下記になります。
火力の燃料は原油価格に左右されるため、高騰している現在はこの数値より高いコストがかかっている状況です。
これらの発電方法は、日本に電気が灯ってから高度経済成長期を支え、現在も欠かせない設備として役割を果たしていきます。それぞれのメリット・デメリットをうまく利用し、いかに安全・安定して低価格な電気を届けられるか、発電事業は常に進歩しています。今後、脱炭素やさらなる安定供給のために再生可能エネルギーもシェアを伸ばし日本の発電事業は大きく姿を変えようとしていますが、これらの設備のおかげで日本は発展を遂げたといっても過言ではないでしょう。
それでは次回、今後期待がされている再生可能エネルギーと呼ばれる発電方法の紹介をします。