発電のはじまりと今後の展望日本の発電事業の歴史に迫る

①電気が送られてくるまで
2022.10.14

現代では、全国どこでも生活圏において電気は不便なく使うことができています。これは時代の発展とともに発電設備が整えられた電力事業の成果です。どのように発電事業が始まりどのように発展してきたのか、歴史を追っていきましょう。

※本記事は電気事業連合会、経済産業省に掲載されている数字を参考にしています。

 

発電の歴史を振り返る

発電の歴史は大きく4期に時代を分けてみることができます。発電の誕生から新しい発電方法の導入など、電気の需要拡大・全国普及に合わせて発電事業も変革を繰り返しています。どのような歴史を辿り、日本全体の莫大な量の電気を発電できているのでしょうか。

◆第1期【発電の始まり】1867年~1911年

明治時代、文明開化により西洋文化があふれます。その中で東京・銀座に日本初の電灯()が灯されました。各地で電灯が灯される中で1886年に日本初の電力会社である「東京電燈株式会社」(のちの東京電力)が開業。翌年には名古屋電灯、神戸電燈、京都電燈、大阪電灯が相次ぎ設立されました。この年に日本初の火力発電所が誕生し、一般家庭にも電灯が灯されるようになりました。これを機に電灯会社が各地で開業し、それとともに火力発電所も広がっていきます。

しかし、1894年に日露戦争が勃発し火力発電の燃料となる石炭価格が高騰したのをきっかけに、水力発電所が数を増やしていきます。また、1896年には電気事業者の監督行政が全国統一化されました。この頃の電気事業者は火力発電23カ所、水力発電7カ所、水・火力併用3カ所、電灯数12万余。都市部の電灯から工場の動力まで電気需要は高まり続け、1911年に電気事業法が交付されました。

 

◆第2期【水主火従の時代へ】1912年~1962年

1900年代初頭は第一次世界大戦~太平洋戦争による軍事需要でさらに電力需要が高まります。相次ぎ建設された水力発電が1912年に火力発電の出力を上回り、さらに1913年に宇治発電所(27,630kW)、1923年には読書発電所(40,700kW)と大規模な水力発電所が運開されていき、水力発電が主な電源構成である「水主火従」といわれる時代が始まりました。家庭も工場も電化が進み、国内の発電量はどんどん増加していきます。この頃には東京市内にはほぼ電灯が普及していました。

また、電気需要の飛躍により各所に乱立していた電灯会社も統合され、電力融通など送電網の構築も行われていきます。1939年に電気庁が設置され、民間の電気事業者の設備をまとめるため半官半民の日本発送電株式会社が設立されました。この頃は水力発電134カ所(約197万7000kW)、火力発電18カ所(約27万4000kW)にのぼる設備がありました。

1945年太平洋戦争が終戦し、日本は高度成長期を迎えます。経済大国へと成長するに伴い電力需要も拡大し、大規模電源開発が始まります。その代表的な発電所のひとつに1963年に完成した黒部川第四発電所があります。日本の電力供給に大きく貢献しただけでなく、黒部川全体の流量の調整が可能となり下流の発電所の効率化にもつながりました。

◆第3期【火主水従と原子力発電の発展】1963年~2011年3月11日

高度経済成長期(1955~1973年)を迎えた日本は電力の需要がさらに加速します。60年代前半には開発に適した土地が減ってきた水力発電に代わり火力発電所が次々建設され、水力発電の発電量を上回ります。「水主火従」の時代から「火主水従」の時代への移行です。その後も火力発電が日本の発電事業を支え続け、現代においても全発電量の約7割を担っています。

しかし、それと同時期に2度のオイルショック(1973・79年)が発生します。この時期に建設された火力発電の燃料は石油でした。オイルショックの影響を受けた発電事業は、天然ガス(LNG)を燃料とする火力発電所や原子力発電所の導入が本格的に進むこととなります。

1975年には国産初のLNG火力発電所となる東京電力・袖ケ浦火力発電所2号機(出力100万kW)が運転を開始。1978年には東京電力・福島第一原子力発電所4号機(出力78万4000kW)が運転を開始し、東京電力の発電設備で原子力発電が水力発電を上回ります。以降、LNG・石炭・石油、原子力、水力、地熱や再エネなどとエネルギーミックスされた発電が広がっていきます。

◆第4期【原子力発電のあり方と再生可能エネルギー】2011年3月11日~現在

2011年3月11日に発生した東日本大震災を境に日本の電力事業は激変することになります。全発電量の約26%を占めていた原子力発電を停止し、その発電量を補うため火力発電比率が大幅に増加。再エネ電源の普及も進めますが、火力発電に頼らざるを得ない電源構成となりました。

そして現在、世界的な脱炭素の流れを受け電力業界は新たな変革期を迎えています。2015年に開かれたCOP21のパリ協定にともない、日本も2020年にカーボンニュートラルを宣言。「2030年に46%削減(2013年比)、2050年にカーボンニュートラルを実現」を目標に定めました。日本が排出するCO2の約4割が電力からの排出であり、火力発電を減らし太陽光など再生可能エネルギーへ移行することがカーボンニュートラル実現への重要な項目のひとつとして強く求められています。

2030年度におけるエネルギー需給の見通し(エネルギーミックス)

2021年に発表されたこのエネルギー基本計画も「野心的目標」とされ、達成するには各方面の法改正、規制緩和、技術開発が必須です。原子力も20~22%程度の供給力を組み込まれているため、再稼働前提の計画となっています。2030年の目標、2050年カーボンニュートラルに向けて大きな動きが起きてくることが予測されます。

電気料金の大幅な変更など一般家庭にも関係するので最新動向に注視する必要があります。

 

まとめ

日本の発電は時代にあわせて改革と発展を遂げてきました。そして現代ではカーボンニュートラルというまた新たな時代へ突入しています。需要家の電気料金とのバランスも取りながら、今後は太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電設備が増えていく予定です。

また、海辺や山間部に大規模発電所を建設し各消費地へ長距離送電する大規模集中型から、比較的小規模な発電装置を消費地の近くに分散して配置する小規模分散型への移行も進み、日本の電力事業は大きく姿を変えようとしています。今後の発展により電気はさらに生活に必要不可欠なエネルギーへと変わっていくことでしょう。